ネコ型社員の時代―自己実現幻想を超えて (新潮新書)
山本 直人
「ネコ型社員」になんかピンとくるものがあって読んでみた。
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●ネコ型社員:自らの暮らしをまず大切にする、企業に対する帰属意識が低い
●ネコのイメージ:ネコは人からの指示を受けるのではなく、「勝手」にやっている。スキルは高いが命令に応えて行動しない(その代わり、集中力を発揮したときの成果はすごい)
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すっかり景気も停滞して、経済が成長「しない」というのがノーマルになりつつあるこの頃。
こうした、かつての社員像とは違った、ネコ型タイプの社員が増えてきたという。
言葉であらわすとすると、かつての社員は「忠誠」「上昇」、ネコ型社員は「信義」「向上」。
会社に忠誠をつくし、モーレツに働いて出世(=上昇)するのではなく、会社は単なる「働く「場」」。人と人との信義は大切にするが、そこで目指すのは社内での出世ではなく、自分自身の価値の向上。
勉強ブーム、自己啓発ブーム、起業ブームに象徴される、会社に依存しない自分作り。そして出世に対する執着のなさ。出世しても会社の業務に忙殺されて、家族との時間が乏しくなることを求めない。
高度成長期の価値観からみれば、こういった会社に対する忠誠心の低さや一見覇気の無さに通じる出世欲の無さっていうのは「正すべきもの」と写るかもしれない。
でも、このネコ型社員のような人の変化というのは、その時代に生きるための人間の適応能力のあらわれなんだと思う。
資源が枯渇していく中、もう過剰な労働や生産はいらない。ほどほどの労働と食べていけるだけの稼ぎがあればいい。これは結果、長く生き延びるための知恵なんだろう。
→「ネコ型社員を上手に成長させていくことは、結局、将来の会社と社会を支えていく」
→「「何を考えているのかわからないヤツ」(ネコ型)があちこちにウロウロしている職場の方が面白い」(かつて良きものとされた、「お互いを分かり合っている職場」の対比として)
って著者の言う、この受け止め方がいいなと個人的には思う。
日本人は勤勉な民族だというけれど、実際そのイメージは昭和以降に作られたものらしい。江戸や明治においては時間にルーズで無断欠勤も多発、かなりのんびりしていたとのこと。
だから、今本来の姿に戻りつつあるのかもしれない。人間本位の働き方。
この本を読んで自分自身がどうあろうとかそういった気持ちにはならなかったけど、今(いつだってそうなのかもしれないけど)時代の過渡期にいるんだなぁ。。っていうなんだかわくわくする気持ちになった。
今閉塞しているように感じるけど、きっとまた生き心地のいい社会が徐々にできてくるような気がする。
色々考えさせられる面白い本だった!
老人になってから、この「時代」を懐かしく思い出しそう。そして新人類?に悩まされる中年になったとしても、若者の新しい価値観を面白がれる自分でいれたらいいなとおもう。
自分自身もよい社会のパーツになれたらいいけれど。。まずはお勉強。
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