絵のない絵本 (新潮文庫)
矢崎 源九郎
↑わたしが買ったのとちょっと違う。。。?でも、中身はおんなじかな?
アンデルセンの、月が語る短編集。
絵かきが、悲しい気持ちで空を見上げたら、月が語りかけてきた。
その月が語る32夜の物語。
・・・
とても、美しい短編集でした!
月のひかりが地表をすべって、世界の様々な一場面を目撃し、それを絵かきに語る。
いろいろな国の話が出てきますが、だいたいがアンデルセン自身が旅をしたときの印象を基にえがかれたものとのことです。
風景の描写や、女性の美しさについての描写、読んでいて幸せな気持ちになりました。また、こどものかわいらしさについては特に、素直に書かれています。
そんな短編集ですが、なぜか、私が一番印象に残った話は第十九話でした。
舞台はある街の劇場、「感激をもって劇場を愛する」俳優でありながら、芸術からは愛されず(=大根役者)舞台にでれば観客からあざけられる・・・、舞台のあと泣きに泣いて、真剣に考えた自殺を一旦思いとどまる。。。
それから1年、みじめな旅回りの一座に彼はいて、その舞台でも口笛でののしられ、舞台から追い出されて・・・その夜、葬儀車の車の中に彼はいました。(=自殺してしまった、、)
そして、「そこ(彼が埋められた墓地)には、やがていらくさがはびこることでしょう。墓堀りの男はほかの墓から抜き取ったいばらや雑草を、そこに投げ捨てることでしょう」
・・・これで終わりです。
無性に悲しくなりました。。わかっていて、悲しい。こういう現実がどうしてもある。一握りの成功者の影で、無数にあると思います。。
でも、自分は成功者の方を向いて、頑張っていきたい。。。成功を掴むかどうかは別として、こんな悲しい最後はいやです。。
なぜか印象にのこった悲しいお話でした。
そんな悲しいお話のほかにも、ほほえましい話、恋愛の話、ほんとうにある一場面をきりとっただけの話、いろいろな話が満載です。
こういう美しい文章をもっと読んでいきたい。すてきな1冊でした。
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